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■『討魔龍伝承 第一話』/02

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▼ 幻樹亭

GM:三人が大通りを東に進むにつれ、海から微かな潮風が吹いてくる。で、日も暮れかかった頃、君らはようやく旅人達の宿、『幻樹亭』に辿り着いたよ。入り口の上には堂々とした大木の絵が描かれた看板がかかっている。古めかしい木の扉は、かなり重くて丈夫そう。
ラージャ:「ごめんください」って宿屋に入る。
(エルバート):チャールィー浜か(笑)。(編注:キャラの括弧表記は、架空世界において『その場にいない』ことを示しています)
GM:扉を開けると、中は多くの旅人達でごった返している。さて、どうする?
(エルバート):ちょいマスター。こっちの出番ないの?
GM:ちょっと待って。
シアルグ:やっぱり寝る場所を確認するのが定石ちゃう?
GM:店の奥にはカウンターがあり、その後ろには店の主人らしき中年の親父がおるよ。
ラージャ:んじゃ、カウンターに行って、親父にクロスカウンターするぞ。

──棒立ち親父に放つそれは、ストレートと言う。

ラージャ:力ロールで、でぇやぁあぁぁぁっ!! (ガシャン)……成功っ!!
(編注:『ガシャン』は、サイコロを机の上に転がした時の音。青森物語では%判定で用いる十面体二個か、ダメージ決定に使う六面体を二、三個振っていることが多いです。巷のリプレイではよく『コロコロ』などと表記されています。それはそれで分かりやすくはありますが、録音テープを聞く限り、そんな可愛らしい音が聞こえたことはなかったりして)
GM:親父も一応、(ガシャン)……回避成功。
ラージャ:チッ……(いきなり声色を変えて)「すみませぇんv あのぉー、一晩、部屋をお借りしたいんですけどぉー」
GM:「えー、乱暴な客にもまだ開いている部屋はあるけど、お泊まりは何名様でしょう?」
ラージャ:「3名です」

   (一同爆笑)

──見捨てられた自称大魔道士、エルバート。

GM:「かしこまりました。三名様ですね。ではすみませんが、ここに署名をお願いします」って、宿泊台帳を渡される。
ラージャ:んじゃ、あたしは偽名を……
シアルグ:俺はその台帳に『空条Q太郎』と記す。
GM:……あんたら、何もん?
レーラカイス:旅人達に情報を訊きます。
ラージャ:偉いなぁ。
GM:『情報を訊く』ったって、どんな情報?
レーラカイス:金儲けの……。

──金に忠誠を誓った騎士、レーラカイス。

ラージャ:……。

 その後一行は、それぞれ好き勝手に注文した食事をとる。一方、一人夜の都を徘徊することになったエルバート。気の済むまで散策を続けた挙げ句、宿をとって休もうとするも、『全身紫づくめ』という異様な風貌が災いして宿泊を断られ続けるハメになる。ならば自分と同類の輩が泊まれた店なら大丈夫であろうと、道行く人にレーラカイス達のことを訊こうと近寄れば、怖がって逃げられ(交渉ロール失敗)たりしつつ、ようやく『幻樹亭』へ向かうこととなる。

GM:エルバートも『幻樹亭』へ辿り着いた。宿屋の一階は酒場も兼ねていて、周りには君同様、胡乱な目付きの特殊な旅人達がたむろしているから一安心。
エルバート:じゃあ、レーラカイス達が食事しているテーブルへ近寄ろう。「やぁ、皆さんお久しぶりぃ!」って。
ラージャ:「うぉーっ! つまみ喰い野郎登場か! 千切りにしてやるーっ!」 シャキーン、シャキーン!(編注:『酒場で抜刀』な効果音。『効果音』については以後SE(サウンドエフェクト)などと表記。興奮した猿共は、よくこういった擬音を口走ります)
エルバート:ドカッと座って、ガツガツ飯を食べ始める。皆の皿からムラなくつまみ喰いしまくる。「トゥアッ、とぅあ、どりゃーっ!」
ラージャ:「許せん」 チャキン! 「斬り殺してやるぅ!」

 かくして食卓上にて、自称大魔道士と女狂剣士の死闘が勃発。

シアルグ:これはマズイ。二人の戦闘の傍らで、皿を引き寄せ俺が食べまくる。

 数秒後。自称大魔道士の両手は血まみれになり、戦闘終結。皿は既に空になっていた。
 仲間内での無益な戦いと食餌を終えた一行は、その後二階の部屋へ行き、一息ついた後、今後の予定などをのんびりと話し合うことになる。

GM:えー、君らがそんな馬鹿話に花を咲かせていると、部屋の扉をノックする音がする。
ラージャ:ノックは無用! タララララン♪
GM:では遠慮なく。ドアが開き、宿屋の親父が入ってくる。
「皆さん。ただ今、下で食後の茶会を始めているから、よろしければ是非どうぞ」
ラージャ:「ほー。あたしゃ、行こうかねぇ」
レーラカイス:「行きます」
シアルグ:「じゃあ俺も」
エルバート:すると階段を下りた君達は、テーブルで眠る私を見れるわけだ。
ラージャ:椅子に座る前に粗大ゴミにもう一突き。プチャッ!
エルバート:「痛い痛い! 何をするんだっ!」って叫びながら意識を取り戻す。
ラージャ:「刺しただけよ」
エルバート:「このネーちゃん、怖い」
GM:じゃあ目覚めたエルバートも茶会に招かれる。
エルバート:「え? 僕も招待してくれるのかい? うれしーよ、僕は」って、感涙する。
GM:さて、みんなが一階中央の木の円卓に集まったところで、宿屋の親父が茶を運んでくる。少し得意げな調子で親父が言う。「これは『幻樹亭』の名物なんだ。じっくり味わってくれ」 みんなに木の湯飲みを渡すと、親父も君達と同じテーブルに座って話を続ける。「あんた達、見覚えがないから、ここに来たのは初めてだろう?」
ラージャ:「ええ、確かに初めてですけど」
GM:「それならこの宿屋『幻樹亭』の名前の由来を是非話しておきたいんだが、どうかね?」
シアルグ:「いらん」
GM:…………
エルバート:親父の話を全く聞かず、茶を啜っては辺りをキョロキョロ見てる。
ラージャ:「はい、して下さい。うれしいわぁ」
レーラカイス:ということで、ちょこっと、聞くことにします。
GM:騎士の言葉に大きく頷いた親父は、店内に響く大声で、その場にいた他の旅人達にも声をかける。「この宿屋の名前についての冒険譚を聞きたい奴は、真ん中のテーブルに集まってくれ」って。そうすると君達がくつろぐテーブルに二、三人の旅人がやってくる。その中にはとても格好よろしい吟遊詩人もいたりする。
ラージャ:ほーっ。

 そして『幻樹亭』の主人は胸と声を張り、自分がかつて成し遂げた冒険譚を話し始める。それは、旅の戦士だった親父が、とある老魔術師から『まぼろしの種』という、実ると幸福を呼び込むという種をもらい、それによって、ある村を救った、というものであった。

GM:「その魔術師から貰った種ってのが、実はまだ残っていてな。俺はそれを一粒、この店の裏庭に植えてみたんだ。しかし、その種はあの時のようにすぐに実らなかったんだ。かといって、いつかは芽が出るかも、と気になって、俺は旅に出る気もなくなってな。そんなわけで結局、俺は今日もここで宿屋の主人をやってる、ってことなのさ」

ラージャ:「ふーん。だから『幻樹亭』なのね」
GM:「ちなみに、その『まぼろしの種』は、まだあるんだ。もしあんた達が欲しければ、やらんこともないが……」
ラージャ:「タダですか?」
GM:「ああ。その代わり、と言ってはなんだが、もし実らせることができたら、その方法を教えてくれないか。いつかまた、この店に来た時にでもな」
ラージャ:「じゃあ、貰いましょう」
シアルグ:「タダでくれるものだしな」
GM:親父は、興味を示したラージャとシアルグに一粒ずつ、小袋から取りだした種を渡してくれる。
エルバート:その種、食べれんの?
GM:「さぁ。食べてみたことなどないからなぁ」
ラージャ:「あんたならきっと、胃の中でパーッと実らせて幸せになれるわよぉ」
エルバート:「そ、それじゃあ死んでるよ」
GM:君らがそんなことを言いあっている傍らで、他の旅人達も親父から種を受け取っている。先程の吟遊詩人もその一人。で、君達が茶を飮みながらくつろいでいると、その吟遊詩人がやって来る。「初めまして。私は詩人のライフィス。見たところ、あなた方は冒険者のようですね。アロカランへは何か用があって訪れたのですか?」
シアルグ:「いや」
ラージャ:「見ての通り、タダのゴロツキ。決して怪しいもんじゃあございません」
GM:他の人は?
レーラカイス:寝てます。
ラージャ:いっ、いつの間に!?
エルバート:親父の話があまりにもしょーもなかったんやろ。近寄ってきた胡散臭い詩人に言うよ。「何だね、君。この偉大なる天才魔道士に何か用かね?」
GM:「どうやら、目的があってこの都に来たのではなさそうですね。それでは一つ、あなた方にお願いしたいことがあるんです。この種をこの都から西へ向かった場所にある、最終僧院の大僧侶、カルマ様という方に届けては頂けませんか?」
エルバート:「ほぉ、この天才魔道士にそんな小間使いを押しつける気かね?」
GM:「いや、私はこちらの女性にお願いしたのですが」やって。
ラージャ:「うーん。でもねぇ、私達もほら、<冒険者>ですしぃ(笑)」
GM:何が言いたい。
ラージャ:「タダというわけにはねぇ。ケッケッケ」

   (一同爆笑)

シアルグ:お前は鬼か(笑)!
GM:「そうですか。ではこれでどうでしょう」と、詩人はお金が入っているらしい小袋を渡してくれる。
ラージャ:中身を調べるぞ。
GM:ざっと銀貨600枚。
ラージャ:ウガーッ!「その依頼、喜んで引き受けましょう」
GM:「それは良かった。私は他に用がありますので、もうここを発たなければなりません。それでは、あとはよろしくお願いします」 そう言い残して、吟遊詩人ライフィスは『幻樹亭』を出てゆく。
エルバート:歌、聴いてみたかったかも。

 その後、エルバートの寝床も用意してもらった一行は、新たな旅立ちに向けてそれぞれの想いを胸に秘め、深い眠りにつくのであった。



 
 
 

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