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■『ハウゼム、閉じた物語』/03

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■ scene 03
〜グニャグニャになった挙げ句、適当に閉じた物語〜

 マスターは、先程行ったカードゲームの札を、表を向けたまま、円を描くようにテーブルの中央に並べ始めました。

GM:……カードはちょっと乱暴に混ぜてしまいましたけど……まぁ、さっきのわけのわからん話なんて、覚えてる人はおらんでしょう……
スカイニット:指輪を作った賢者が旅に出て、愛し合った少年にくれてやったんですね……愛の証に(笑)?
ラング:でもその爺さん、死んでもうたしなぁ(笑)。
スカイニット:で、その指輪を貰った少年が、呪われたりもしたけど、結局は世界の果てで世界の呪いを解き、平和をもたらした。つまり正しい心で自分の信念を貫き通す話。
GM:ふーん、そんな話やったっけ……(といいつつカードを並べています)
スカイニット:……あ、それ<美女>のカードは出しましたよ。最後の方で……
GM:あぁ、はいはい。
スカイニット:で、<ボート>? 船なんて出ましたっけ?
ラング:むー。
クコ:出たよ。最初の方で。
ラング:俺、賢者のおっちゃんに<死>んでもらったよ。
スカイニット:あと<オオカミ>男も出しました。
GM:狼男!?

 などと、プレイヤーの出していったカードを聞きながら、結局かなり適当に、物語カードを並べるマスター。そもそもの企みは、彼らにこの夢の中の終わらない物語をグルグル巡ってもらい、そこからの脱出方法を探して貰う、というものでした。ちなみにその方法とは、物語の最初と最後のカードの間で、何も書かれていない真っ白な結末カードを見つけだし、自ら自身がその結末を決めることによって、この閉じた夢の物語から脱出する、という想定でした。

 更にどうでもいいことですが、この閉じた物語そのものが、酒場にいた魔族のカード男、ハウゼムだったりします。彼はこうして、自らの中に取り込んだ語り好きで哀れな冒険者達によって、自らの物語を拡張し続けていたりします。

GM:さて……と。全員1D6ずつ、振ってもらえますか。
ラング:……6
スカイニット:5。
GM:じゃあラングは、この<賢者>から6番目くらいで……
ラング:<恋に落ちる>(笑)? 誰とやねん(笑)。
GM:……に、フィギュアとか置いていって下さい。
シアン:5です。……あのー、私って、目を開けてる時、何かありませんでした?
GM:え?……あぁ、眠人の特殊能力のことか……まぁ、後で調べときます。
スカイニット:で、クコさんは……<オオカミ>ですか?
クコ:<オオカミ>ですね……

 と、マスターは、クコが選んだフィギュアを、<オオカミ>のカードの上に置きます。

GM:では一番最初のラングさん。ふと気づくと、君は突然、猛烈にフォーリンラヴな気分に苛まれる。狂おしいばかりの恋心ってやつですか。
ラング:ほぉ……で、私は今、どこにおんの?
GM:どこかの小さな<町>ですね。今は<夜>で、フクロウなどがホウホウ鳴いてます。

 と、マスターは、ラングの駒を進め、閉じた物語を語り進めていきます。

ラング:フクロウホウホウ鳴いてるところで恋いしたい気分ってもなぁ……(笑)。
クコ:じゃ、フクロウに一目惚れ(笑)。
GM:「おぉ、フクロウ! 君はなんて素敵なんだ!!」(笑)。
スカイニット:「その艶やかな羽! つぶらな瞳!! もう僕を好きにしてくれよぉ」(笑)。

   (一同爆笑)

ラング:フクロウじゃ嫌だなぁ(笑)。
GM:じゃあ、どうします?
ラング:宿屋とか捜したいなぁ。
GM:宿屋か……さて、そうして夜の町をフクロウと見つめ合ったりしてさすらったラングは、ある<継母>が営む宿屋にたどり着きました。『笑う子猫』亭。
ラング:そこでいいでしょう。扉をノック。
GM:「まぁ、こんな夜更けにどうしたの?」
ラング:「すみません、一晩宿をお借りしたいんですが……」
GM:と、<継母>と目があったラング。ムラムラと恋心が再発(笑)。
ラング:しゃあないなぁー(笑)。

 マスターは、カードの円環の別の箇所に置かれた駒を指します。

GM:さて、ところかわってスカイニット……は、<ボート>?……それって、どんな感じやろ?
スカイニット:これは……氷雪船で、私は海獣狩りをしています。「アザラシだっ! 追えーっ追えーっ!」
GM:なんやけど、ふと、思い止まったりもする。さっきまで自分はここにいたのかな……とか。
スカイニット:あれっ? ……これは120年前の夢かも……
GM:あぁ、自分の昔の夢か……そやね、ひょっとしたらこれは夢かもしれない……と、引っかかる気持ちも少しあります。えー、その船はある小<島>に到着しました。そこには赤い眼の<魔女>がいました。(編注:『赤い眼』とは、カード男の影を表しています)
スカイニット:じゃあ魔女に訊いてみよう。「あなたが私をここに連れてきたの?」
GM:「いや、儂はそんなこと、してはおらんよ」
スカイニット:「じゃあ私達を元の世界に返してよ」
GM:「元の世界?……そんなもの、どこにあるというのじゃ?」
スカイニット:「それがわかってたら、自分でもう行ってるわよー」(笑)。
GM:「そうさな……それならばお前はまず、<旅>をすることじゃな」
スカイニット:「旅ねぇー」

 マスターは、カードの円環の別の箇所に置かれた駒を指します。

GM:えー、シアンが目覚めると、
クコ:目の前に<王子>様が(笑)。
GM:王子は潤んだ目で君の手を取り言いました。「おぉ、君こそが、私のずっと探し求めていた人だ。どうか私とこの<城>で、ずっと暮らしてくれないか!」
シアン:「やだ」

   (一同爆笑)

ラング:速っ(笑)。
GM:王子はガクリと膝を落としてうなだれました。「こ、こんなにも速く私の求婚を断るなんて……あなたには、何か深い悩みでもあるのですか?」 突然親身になって話しかける王子。
シアン:(笑)。
GM:感覚で16以上振ってもらえる?
シアン:成功。
GM:その王子の眼は、深い赤色で、魔力的なものをちょっと感じます。魅惑の瞳ってやつですか(笑)。
シアン:あらっ……?
GM:「何か私の力になれることはないだろうか?」
スカイニット:『私の力』になったらあかんでしょう(笑)。
GM:「何か私が力になれることはないだろうか?」(笑)。
シアン:「とりあえず……元の世界に帰りたいんですけど……」
GM:「元の世界?……それは別の世界、つまりあの世のことですか? それならばあなたは一旦、死ななくてはいけませんよ」
シアン:「それもやだなぁ」
GM:「それならば、ある<賢者>が作ったという、<指輪>と<王冠>を探すといい。その二つが、世界を変える……あなたを死とは異なる別の世界へ連れて行ってくれるやもしれません」
シアン:「じゃあ、それを探してみます。ありがとう」
GM:で、旅をするわけですか。
シアン:旅します。
GM:では旅を始めたシアン。道中、<賢者>や、彼が愛したという(笑)<少年>に会ったりもしましたが、肝心の<指輪>と<王冠>はさっぱり見つかりません。で、ある夜のこと。森の中を歩いていると、ウオォーンという<オオカミ>の遠吠えが聞こえます。シアンはひょっとして自分が彼らの獲物になっているのでは……ハッ、危ない!?、とかちょっと思ってしまった時、近くの草むらが、ザザザッと揺れ動き、そこから何かが飛び出して来ました……って、これ誰? (と、<オオカミ>カードの上にあるフィギュアを指す)
クコ:私です(笑)。
シアン:きゃっ(笑)。
GM:小人が飛び出してきました(笑)。
クコ:「罠に引っかかって怒った狼に追われてるんだ」

   (一同爆笑)

クコ:「助けてくれー」(笑)。
GM:いきなり助けを求められます。
ラング:立場逆やな(笑)。
GM:あぁ、シアン。君はこの夢の中では不思議と眠気もなく、どこまで走っていけそうな気がしてます。小人は迫り来る狼にとても怯えています。
クコ:「あんなに怖い狼は見たことがない」(笑)。
シアン:じゃあ、やってきた狼達を眠らせます。
GM:それは呪文。ある種の<呪い>ですね。(と、二人のコマを進めて言います)……じゃあ呪文発動したか、試してみて。
シアン:えー、霊感ですね……(ガシャン)……25。
GM:それは成功ですね。大木を背にして唱えた呪文は大成功。小人を追って草むらから次々飛び出してきた狼達をバッタバッタと昏倒させていきます。元の世界にいた時より、調子いいみたい(笑)。
シアン:王子様と一緒に暮らしてもよかったかもしれない(笑)。

   (一同爆笑)

GM:と、一瞬思ってしまう。さて、助けられた小人が懐から<指輪>を出しました。
クコ:「そういえば、これを拾ったんです」
GM:と、その指輪が一瞬キラッと光ります。魔法使いのシアンには、それが秘められた強い魔法の力だということに気づきました。そしてそれこそ、王子が語っていた別の世界へ連れて行ってくれる、かもしれない魔法の指輪、なのかもしれなかったのです。

 マスターは二人のコマを次の札の上に進めて言いました。

GM:「ありがとう、小人さんっ」 しかし、その指輪を受け取ったシアンはガラにもなく、トキめいてしまいます。なんと<二人は恋に落ちて>しまったのです。

   (一同爆笑)

クコ:ち、違うと思うー(笑)。
シアン:(笑)。
GM:問答無用。まぁ、エンゲージリングと勘違いしたんやろ(笑)。
ラング:なるほど(笑)。
スカイニット:あのー、この話はマスターの語りによって、自然に流れていってるんですか?
GM:そやね。ある種の不可思議な力に流されてることは、物語の中の君達にも少しずつ勘ずくものがあるかもしれんけど……恋に落ちた二人には、そんな些細なこと、入り込む余地はありませんでした(笑)。
クコ:わはは(笑)。
シアン:あはは(笑)。
スカイニット:こりゃ、早いことなんとかせな、えらいことになりそやなぁ(笑)。


 
 
 

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