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■『ユイラン、町へ出る』/03

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■ scene 03
〜ソテーをつつきながら閃いた、ちょっと的外れな一大企画、あるいは大罠〜

クコ:えっとー、今、夜なんですね。
スカイニット:そんなに夜更けってことはないと思うけど。
ラング:で、お嬢様がいなくなったのが昨晩。今朝になっても帰ってこないから、みんなが心配している、と。
GM:それまでソテーをおいしそうに頬張っていたポリーが、そのおいしさのあまり、何かにひらめいたかのように、パッと顔を上げて丸眼鏡をきらめかせる。「あ! そういえばあの香水、かなり珍しい調合で作ったから、何か魔法とか使って、まだ気配とか辿れるかもしれませんよ」
クコ:「おいおい。そういうことはもっと早く言ってよ」(笑)。
スカイニット:そのソテーのおいしさの余り、私も何か……具体的には魔力的なひらめきとか感じちゃったり……しませんか(笑)?
GM:あぁ、マジックカードね(笑)。いいよ。では一枚どうぞ。
クコ:作った人は(笑)?
GM:はいはい。作った人もどうぞ。
スカイニット:……<車輪>……
ラング:何が回ってるんやろな。
スカイニット:そりゃ、ソテーのおいしさがグルグルグルグルーっと(笑)。
GM:「はぁー、これ本当においしいですねー」とポリーはすっかり幸せ気分。
スカイニット:「ちょっと、それあたしの分よ」(笑)。
ラング:とりあえず負けてられへんな。食べるのは(笑)。
スカイニット:「この間の料理もいつの間にか全部食べてたでしょ」
GM:「いや、あの時はテーブルに誰もいなかったから、つい……」
クコ:結構な量あったと思うけど(笑)。
GM:「すみません、食べ物には目がなくてー」
スカイニット:「まぁ、クコの料理はおいしいけどさぁー」
GM:まぁ、クコとスカイニットだけってのもアレやし、ソテーパクついた人は、全員マジックカード差し上げます。
ラング:あ、ほんまに?
GM:シアンさんは寝てるの? 未だ起きて食べてるの?
シアン:食べてます。
GM:ではカードどうぞ。
シアン:……後、ここの色付カードもパクりたいんですけど。(と、隣のクコが置いていた魔力源を指さす)
GM:じゃあそっちはお互いに霊感対抗ロールで。
クコ:(ガシャン)……えー、こっちは8足す……
シアン:30。
クコ:差し上げます(笑)。
GM:えー、クコさん。カードは一応伏せて、シアンさんに選ばせてみて下さい。
クコ:(トランプのババ抜き状態で)はい、ど・ち・ら・でしょう?
シアン:……こっち。
GM:とまぁ、そんな感じで、魔力集めもいいですけど、行動の方も纏めて下さいね。
クコ:では、なんらかの魔法は……
スカイニット:今シアンが考えてくれてるから、
シアン:考えてます。
クコ:……任せます。
ラング:呪文はシアンに任せるとして、俺らはそれ以外の方法考えてみよか。
スカイニット:まずはこの酒場で情報収集しよっか。
GM:あぁ。その酒場には友達のジャンとジャックもいてるし、すぐ近所の『黒猫』には、その双子の兄のルソーもおるから、なんか協力を頼むのもいいかも。とりあえずジャンとジャックがやってくる。「よぉ、スカイニット。今日のリュートはなかなか良かったぜ」
スカイニット:「まぁね。本気を出せばあんなもんよ」
GM:「しかしお前、つい最近まで風琴ばっかりで、リュートなんてやってなかったのにな」
スカイニット:「まぁ、リュートはついでだから」
GM:ジャラジャラジャラッと、傍らで怒ったように竪琴が鳴る(笑)。
スカイニット:「ね? ほっといても勝手に鳴るし、便利でしょう?」
GM:ジャンとジャックはちょっと驚いた様子。「すげーな、これ。一体どこで手に入れたんだ?」
スカイニット:「ちょっと古道具屋の軒先でね。銀貨2枚もしたのよ」
GM:「銀貨2枚か。じゃあ金貨2枚出すから、これ俺達に譲ってくれないか?」
スカイニット:「だめだめ。このリュートは人見知りするのよ。そんなことより、ユイランっていう娘を見たことない? ラングが町の噴水広場で見かけた白銀の髪の歌うたいなんだけど」
GM:「歌うたいか……そういえば、そんな奴が噴水広場に時々いるらしいな。ほら、この近くの『幸運の風』亭にも、現れたらしいし。年頃の娘だったらしいけどな。
スカイニット:へぇ……ところで、あの肖像画ってまだある?
GM:テナイさんはそろそろ帰りかけてたけど。
スカイニット:じゃあ肖像画をちょっと借りてきて、ジャンとジャックに見せてみる。「この娘なんだけど……」と、バサッ(笑)。布とる。
GM:「へぇ、えらく綺麗な娘じゃないか……それにこの子、何か変わった血でも引いてるのか……何か人ではないような……」
スカイニット:「さぁ……」
ラング:ただの高貴な血筋ってだけではないのかな?
GM:「ウォホン!」とテナイさん。「我がマイゼル家には、代々妖精の血が受け継がれております。ユイランお嬢様の白銀の髪は、その表れかと」
スカイニット:「まぁ、そういう話もあるらしいけど」
GM:「長話をしすぎたようで。マリアのことも心配なので、私はこれで失礼します」とテナイさんは帰っていきます。
ラング:「このバカでかい肖像画も持ってってねー」
クコ:ふむ、妖精の血を引いている、と。
GM:ジャンとジャックが不思議そうに訊いてくる。「あんなお嬢さんと知り合いなのか?」
スカイニット:「ってわけでもないけどね。歌がうまいってことだし、会ってみたいじゃない」
GM:「そうだな。例のちらほら見かけるっていう歌うたいも、最近この辺りにも来てたみたいだし、俺達も捜してみるよ」
スカイニット:「もし会ったら、あたしが会いたがっていたって、伝えてくれる?」
GM:「あぁ、いいぜ」と二人はテーブルを離れる。
スカイニット:「お願い。……あ、これ。今日は随分稼いだから」って、銀貨2枚ほど渡す。
GM:「お、気が利くな」とジャン。ジャックの方が、思い出したように、一つ手を叩く。「あ、そういえば昨日こんなことがあったぜ」
ラング:ん?
GM:「昨晩、このメディリオノイルの中央噴水広場で、旅芸人の一座が演劇をやったんだ。で、そこにさっきの肖像画の娘に似た白銀の髪の女の子が、演劇を食い入るように見てたなぁ。かなり楽しそうだったぜ。そんなに珍しい劇でもなかったのに。あの子、普段はあんな劇を見る機会とかなかったのかな……」
ラング:「それは、夜?」
GM:「あぁ、昨日の夜の入りだったな」
スカイニット:「その旅芸人の一座ってのは、どこのどいつだい?」
GM:「どこのどいつって……そうだ、俺達の兄のルソーがやってる『黒猫』亭に、そいつらが泊まっていたらしい。名前は……パオパオ団って言ったかな」(編注:マスター、その場で命名してます)
ラング:「胡散臭ぇ」(笑)。
GM:「そうだな。言われてみると確かに不思議な劇をする一座だったかもしれないな」
スカイニット:「ありがとう。引き止めて悪かったわね」
GM:「それから、あの劇の後、噴水広場の北にある『春招き』亭で、あの劇を楽しんだ客達で歌合戦が突然始まったらしいんだ」
スカイニット:「へぇ。今日のここみたいなものね」
GM:「で、その歌合戦にもその娘、出てたって話だぜ」
ラング:「あっちこっち出てるなぁ」
GM:「しかもその娘、歌合戦で優勝しちまったらしい。その酒場にいたみんなに、タダ酒を振る舞ってたって気前のいい話さ」
スカイニット:むー、どこから調べたものか……
シアン:魔法。
GM:はい。
シアン:<白>、<車輪>、<馬>……で、『魔力を追跡する』魔法。
GM:なるほど。
シアン:うとうとしながらそんなことを思いついた。
GM:今使う? 使わない?
シアン:……使わない。
GM:そやね。ここからやとまだちょっと範囲は大きすぎると思うから。ある程度範囲を絞って唱えたほうがいいと思う。
ラング:とりあえず、現場をあたってみますか。
スカイニット:そやね。
GM:ではそれぞれの行動、纏めて下さい。別々に行動? まとまって行動?
スカイニット:……この貰った金貨100枚。好きに使っていいの?
GM:それは一応依頼料も込みなんやけど(笑)。まぁ、テナイさんはもう帰ったから、好きに使ってもいいと思う。ポリーから君らが信頼できる人達だと聞いてることもあるしね。依頼の方もちゃんとこなしてくれると思ってるはず。
スカイニット:じゃあここは資金を惜しみなく使って……金貨50枚くらい使って、歌大会を開く、というのはどうでしょう?
ラング:あー、そうか。
GM:むー、でも彼女がそんな金貨につられるかどうかは……
スカイニット:いや、賞金は30枚くらいにして、あと20枚くらいで『明日大会があるよ』とかって、派手に宣伝するんです。ようは大会があることを町中に知らせる、ってことに意味があるわけで……
GM:でも、明日の歌大会を開くにしても、そんな早く宣伝できる? 時間かかるんちゃうかな……
クコ:それは厨房仲間を通して、あらゆる食堂で伝えられる(笑)。

   (一同爆笑)

スカイニット:ジャンとジャック、それにルソーにも頼もう。
ラング:金とビラを仕事仲間に渡したりしつつ。

 歌大会開催に乗り気な一同。反してあまり乗り気ではないマスター。普段なら、プレイヤーの発案を極力尊重する(したいと思っている)マスターですが、今回はちょっとシナリオの都合上、その作戦は実りのない結果になることが確定しているので。実は一行が捜すユイランは、妖精の血を引くため、邪神の生け贄として、既に狂信者に拉致されていたりしてます。(拉致の実行犯は、『春招き』亭で彼女をカードの中に閉じこめた、あのカード男、ハウゼムだったりします)

 しかし、プレイヤーの皆さんには、さりげなく張っていた伏線よりも、色んな悪戯で町へ飛び出す歌好きなお嬢様の性格の方に関心を寄せられたようで。(本文を読み返すとそれも無理はないなと思いました) お嬢様の悪戯は町へ飛び出す、つまり不審人物に捕まりやすい、という状況を作り出すためだけに設定されたもの。どうやら大げさに語りすぎた模様。金貨100枚もちょっと災い。なにはともあれ、脱線しつつあることは事実。マスターは、いつもなら翌日には屋敷に戻ってきているユイランが、今朝に限って帰ってきていないことを皆に思い出してもらおうと、さりげなくチャンスを窺います。

GM:えー、ではラングとスカイニットは、楽士仲間に宣伝、と。大会は明日のいつ行われるん?
スカイニット:明日の夜ですね。場所は……
クコ:噴水広場で夕方頃、がいいんとちゃう?
ラング:そやね。
GM:参加資格とか条件はあるん?
クコ:飛び入り参加あり(笑)。
スカイニット:声に自身のある者は誰でも。
ラング:口コミとかで。
スカイニット:ビラも刷る?

 歌大会開催作戦……盛り上がっております。マスター……水を差す隙がありません。

シアン:え?、え?……ちょっと待って?……何?、何?

 盛り上がりに一人取り残され、状況が掴めなくなったシアンさんが、水を差してくれました。

クコ:だから……エサを作るんです。罠の(笑)。
スカイニット:歌コンテスト。
クコ:みたいなので。
シアン:……ミス……歌姫コンテスト。
一同:おおっ。

 ダメでした……

ラング:それええねぇ(笑)。
クコ:(罠の)対象も女の子やし。
ラング:狙いを絞れるなぁ。
シアン:それで……優勝商品を金貨50枚程度のアクセサリーとかにして……
スカイニット:なるほど。
シアン:……お金よりも、装飾品とかにすれば……女の子は喜ぶと思う……
クコ:それはおもしろい。

 しかも拍車かけてます。

シアン:つられて寄ってくるん(笑)。
GM:…………


 
 
 

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■『ユイラン、町へ出る』/03

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