■ scene 21
〜同情する人魚と思案する司祭をよそに、持ち主でない王子に闇の国を所望する日陰者〜
GM:では一方は沖を泳ぎながら、もう一方は浜辺を歩きながら、それぞれその白い建物に向かう、と。さて、しばらくすると、その白い屋敷近くの浜辺で、楽しげに球遊びなどする子供達を見かけます。ついさっき、屋敷から出てきたみたい。その子供達を見たヨザック爺さんが叫ぶ。「おおーっ、デリス、シィ、マギー、サブリナーっ、楽しそうじゃなーっ。儂も混ぜてくれいーっ」とか言って駆け出す。
ピノ:あ、ついに発見ですか。
GM:全員感覚17以上、振ってみて下さい。
セシル:(ガシャン)……成功。
モノユニ:20、こっちも成功。
ハックル:17、ジャスト。
ピノ:……14、失敗。
GM:成功した人は、その老人と子供達の楽しい騒ぎの輪の向こうに、一人、球を持って寂しそうに立ってる少年を見かけます。
セシル:あ、一人16才とか言ってた少年……?
GM:いや、その16才の少年は長屋にいたまま。その球を持った少年は、青い瞳と緑の髪をしていて、上等な白い服に身を包み、明らかに高貴な出で立ちだったりするわけで。セシル的には、自分と同じ上流階級な雰囲気を感じます。
ハックル:ということは、あれがラトニ王子か。
GM:少し寂しそうに、楽しげな子供達を見ている。
モノユニ:その寂しさに僕は惹かれる(笑)。
GM:でも相手は高貴なお方やで。眩しいんちゃう(笑)?
モノユニ:ああっ、近づいていいものか、逃げ出すべきか(笑)。
ピノ:影から近づくってのは?
モノユニ:いいね。フードを目深に被りつつ背後から……
ハックル:それは怪しいぞ。
セシル:じゃあ礼をつくして挨拶しよう。<社交>なども使いつつ、「ラトニ王子ですか?」と。
GM:「……あなたは?」
モノユニ:寂しい少年の背後から飛び退く。
一同:(笑)。
モノユニ:(ハックルに)「王子っ、司祭が邪魔ですっ」(笑)。
ハックル:「いや、私に言われても」
セシル:(日陰者には構わず)「私達はあの子供達を迎えに来た者なのです」
GM:「あぁ。あの歌を歌われていた方達ですね」
セシル:「はい」
GM:「とてもいい歌でした。『サナンの思い出』を、あんな風に歌える人がいるなんて、驚きました」
ピノ:『サナンの思い出』……?
GM:っていう曲名ですね。夜のメロディーのこと。
セシル:「『サナンの思い出』……」
GM:「ええ。我がトバーシュ家に伝わる古い歌なんです」
ピノ:古い歌なのか……
GM:と、そんなことを話していると、屋敷の方から、「王子ーっ!」と、見た感じ侍女らしき娘がお盆を抱えたまま走ってくる。あからさまに君達を警戒してるって感じ。「あなた達っ、王子に何をするつもりっ!?」ときつく問い詰めてくる。やさぐれてるモノユニなんて、あからさまに怪しいし。
セシル:いや。私はあくまで礼を尽くしていますよ。
GM:じゃあフード姿の怪しいモノユニと高貴なセシルを見比べ、侍女はちょっと戸惑っている。
ピノ:「何を仰るのっ! 私の王子はこの方だけですわっ!」(笑)。
GM:山小人の腕をとり、浜辺でピチピチはねる人魚を目にして、侍女はますます悩んでる。やはり怪しい人達なのかも……って(笑)。「あなた達っ、ラトニ様に何をするつもりっ!?」
モノユニ:「いや、寂しそうだったから近づいたまでで……」
GM:「あなたが特に怪しいわっ!」と、モノユニを指さす侍女。
ピノ:あははっ、図星だっ(笑)。
モノユニ:人魚に言われたかない(笑)。
セシル:「いえいえお嬢さん。落ち着いて聞いて下さい」
ハックル:「私達はそこの子供達を連れに来たまでなのだ」
GM:「せっかく仲良くなったラトニ様のお友達に、何かするつもりなのっ!?」
モノユニ:「いやいやいや。その子達を捜してる人達もいるものなんで」と、ヒュッと王子の後ろに隠れる。
セシル:「その子達は孤児とはいえ、あちらの世界では、彼らを待っている人達がいるのです」
GM:「するとあなた達は、この子達を連れ帰りに来たと言う訳なのですね?」
セシル:「申し訳ありませんが、そういうことになります」
GM:「どうして、どうしてあなた達はそんなことをするんですかっ! せっかくラトニ様に出来たお友達なのにっ……」と、侍女はちょっと涙ぐむ。えー、そうですね。美麗26くらいでロールしてみて下さい。侍女のうるうる攻撃に耐えれるかどうかってことで。
モノユニ:なにやら引っかけたいというマスタの念波が感じられますが(笑)。
ピノ:(ガシャン)……引っかかった(笑)。17。
ハックル:同じく、失敗。
モノユニ:やられました。
セシル:……抵抗したんですが(笑)。ギリギリ26。
ピノ:さすが司祭様。血も涙もない(笑)。
GM:ではセシルは、涙ながらに話す侍女を目の前にしながらも、やはり子供達は連れて帰らなくてはならない、という気持ちの方が強かったりする。
セシル:「そうですね、お話はわからないでもないのですが…」
モノユニ:司祭の肩を掴もう。(勇ましい声で)「可哀想だ。やめてやれよ」
GM:「ローザ、そんなことまで話さなくてもいいよ」と、ケホッケホッ、とちょっと咳き込みながら、どうやら喘息持ちらしいラトニ王子が言う。
ピノ:あらら。侍女さんに訊いてみます。「何か事情がおありですの?」
GM:そうですね。ピノの問いかけにそのローザと呼ばれた侍女が話す。この人達はその昔、大陸の西の国、アウロンって所に住んでたんやけど、故郷が戦争によって滅ぼされてしまい、亡命しなくてはならなくなったそうなんです。ところがラトニ王子は、その頃から体が弱く喘息持ちだったので、よその国の汚れた空気の中では暮らせなかった、と。それでこんな壺の中の別荘で、お付きの侍女と暮らすことになったそうなんです。それでそんな寂しい暮らしの中で、長屋の子供達と出会うことも出来て、少しの間楽しい一時を過ごしていたわけなんですが……。ローザが言う。「ラトニ様は長い間、この壺の中の別荘で、随分寂しい思いをされてきました。せっかく同じお年頃のお友達も出来たっていうのに…… それでもあの子達を連れ出すなんて、言いませんよね?」と。ピノ辺りはすっかり同情しかけてます。
ピノ:「じゃあ、この壺の中と外の世界を自由に行き来できるようにしてみてはどうでしょう?」
GM:「でも汚れた下界の空気が頻繁に混じっては、ラトニ様のお体に悪い影響があるかもしれません。まだ咳も治っていませんし……」
ピノ:魔法とかで治せないのかな?
GM:日陰日向コンビはどうでしょう? セシル辺りは、礼節を持って接してた割に、子供達はちゃんと連れて帰ろうとか無慈悲なことを考えてたりするん?
セシル:……いや。ちょっと思案してる。
ハックル:(突然)「では、我が王国に来ればよい」
GM:「その王国は、空気は綺麗なんですか?」
ハックル:「当然だ」
モノユニ:「ははぁー。やがてペット師匠の物となる王国は、空気が綺麗だったんだ」(笑)。とか思いながら王子に進言。「王子っ、それはいいですね。そうしましょう。そしてこの壺を僕に」(笑)。
ハックル:「何っ?」(笑)。
モノユニ:「この闇の国を僕に下さい」(笑)。
GM:なんか所望しておりますが(笑)。
ハックル:「いや。そもそもこれは私の物ではない」(笑)。
モノユニ:「そ、そうですよねー。(小声で)……ならこれもペット師匠の物だ」(笑)。
GM:なんか話が逸れてますが、うるうるしてるピノさんは?
ピノ:あ。じゃあ……もう一度頭ん中を整理して……(パリッ、とせんべいを囓りつつ)……まず、リーンさんが捜してたのは……お爺さんだっけ?
GM:お爺さんと長屋の子供達。
ピノ:子供達もですよね。子供達は、孤児(みなしご)?
セシル:そう、孤児。だからそんな彼らをどうするのか、今、頭を悩ませている最中。
ピノ:うー、じゃあとりあえず、お爺さんだけを連れて帰って…
GM:と、悩んでいる君達を見ながら、はぁぁーと、ローザが長い溜め息をつく。「あなた達。せっかく外界からやって来たというのに、なんとかならないの? あぁ、せめて我がトバーシュ家の家宝、『リミンの瞳』さえあれば……」
ピノ:お?
セシル:「今何と申されました?」
GM:「え? 『リミンの瞳』……ですか? 大戦時、紛失してしまったトバーシュ家の宝なのですが」
ピノ:「それが取り返されれば、どうなりますの?」
GM:「あの首飾りを身につけると、その周囲の空気が澄むと伝えられています。それ故、首飾りを身につけた者の声をも美しくすると。もしその首飾りをラトニ様に与えることが出来れば……王子も外界で暮らせるやもしれません」
セシル:(ようやく話が見えてきて、ちょっとうれしそうに、でもやれやれといった感じで)「仕方がありませんね、ならば…」
ハックル:「おおっ、それは今度の歌唱大会の景品になっていた物ではないか」
GM:「大会? それは一体、何ですか?」
ピノ:かくかくしかじか。(←一言あらまし)
GM:「……はぁ、そういう事でしたか」
ピノ:「ええ」
セシル:「全てを丸く収めるには、その方向でいくしかありませんね」
GM:「そうですね」
セシル:「ということで、一つ、私も出場してみますか」
GM:そこでふと、ローザは首を傾げる。「でもそれって『歌姫コンテスト』なんでしょう? セシル様は男性……ですよね?……まさか……ソッチの気があったなんて。高貴な方だとばかり思ってたのに……」とか、勘違いしながら、ローザはちょっと身を退く(笑)。
ピノ:「いや、司祭様なら大丈夫ですわっ」(笑)。
セシル:「ええ。私はこのまま出ますよ」
ピノ:「え? 女装せずに?」(笑)。
モノユニ:(凄いやさぐれ声で)「エリートは特殊な趣味を持ってるからなっ」(笑)。
(一同爆笑)
セシル:「失敬な」
ピノ:(モノユニに)「勿論、あなたも出るんですよねっ」
モノユニ:「……!?」 シュシュシュシュッ。(逃走SE) 「セッ、セシルさん。後はあんたに任せたよ」(笑)。
セシル:「大丈夫。君も出るんだよ。モノユニ君」
モノユニ:「えっ。いや、それはちょっと……」
GM:で、王子は?
ハックル:「うむ。では、みんなで出場して、なんとか優勝しよう」
ピノ:「おーっ!」
ハックル:「そして『リミンの瞳』を手に入れて、ラトニ殿を外界に導く、と」
セシル:(GMに)あー、でもこれって一人で出なあかんかな?
GM:いや。全員参加でもOKですよ。
セシル:グループ参加は反則?
GM:むー、それは考えてなかった。対戦相手を組み直すのも大変やし、とりあえず一人ずつのエントリーってことで。
ピノ:相手もグループにし直すのも大変やしねー。
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