▼replay_Gear Antique

■『金の瞳の女神 act1』/01

←return   →next













 蒸し暑い夏の午後。某大塚宅の二階の一室は、ただならぬ熱気と見るからに怪しい数匹の進化経路を誤った猿共によって満たされていた。その中の一匹が、嫌々首を振り続ける扇風機からの熱気にあおられながら、人語を発した。「今回は久しぶりのキャンペーンやし、儀式でもしよか?」

 その言葉に反応した他の猿共は、墓の中から蘇ったゾンビのようにムクリと起き上がり、部屋の中央に用意された粗末なテーブルの周りに群がった。そして数分間、儀式の内容に関しての意思疎通が行われたあと、猿共はテーブルを囲むように手に手を取り合って立ち上がり、互いの手を前後に振りながら、二度と聞きたくないような歌声を部屋中に響かせるのだった。


■ act 1-0
〜始まりの儀式〜

一同:せーのっ、
 ♪ぐーちょきぱぁでぇー([復唱]ぐーちょきぱぁでぇー)
   なにぃできるぅー([復唱] なにぃできるぅー)
(右手をつきだして) みぎてがぁぐぅでぇー
(左手をつきだして) ひだぁりてもぐぅでぇー
(元気いっぱいに) ドラミちゃんー(×2)

   (一同爆笑)

一同:ふーっ。(各自、ダイスや筆記用具などの用意を始める)
イルナ:やれやれ……社怪人やで、 俺……。


AD1993/07/28_09/01
劇団『魑魅魍魎』
ギア・アンティーク・キャンペーン
『金の瞳の女神』
『act1〜厄介ごとをひっさげて、奴らが街へ帰ってきた!!!〜』
web mix ver_0.61

system with
『Gear Antique』(ツクダ・ホビー版)
[Copyright 1992 Tsukuda Hobby,All Rights Reserved.]


◆文章上の略号等に関して
(テ注:録音テープを紙に書き写した人による注釈)
(編注:作文した筆者による注釈)
(状況説明etc)
── ……筆者が個人的に思うこと。


■ act 1-1 M'1949/04/12
〜荒野の三人〜

『ウェルチの大戦車戦』……マキロニー暦1942年に起こった戦い。
ユーレンブルク王国重砲馬車軍団の助力を得たフィラム卿の反攻により、ヴァルモン帝国軍は後退を強いられる。また、新兵器、推進爆弾の前に、さしもの降魔戦車軍団も大損害を被ることになる……

GM:場所わかる?
一同:(きっぱり)わからん。
GM:気にするな。まぁそんな戦いから7年後の1949年4月12日安息日。秋の深まりにつれ冷たくなってきた風の吹く中、旧ユークリードの東に位置する『ウェルチの大戦車戦跡』……ほれ、地図にのってるやろ?……を、もうもうと砂煙をあげながら南へと爆走する一台の車があった。
コール:それって『ろりえす』?
GM:そう、『ロリエス』(編注:車名です) さて、そこに乗ってるのはシルバートとコールとハスやね。で、どういう状況なん? 運転してるのは?
ハス:運転してるのは?
コール:(ハンドルを振り回すゼスチャーをしながら)ヘイ、ブーンブーン(笑)。
ハス:というわけや。
コール:イェイ、今日もいー天気だぜっ。
GM:でもちょっと寒いで。
コール:あぁっ寒いっ(笑)。
シルバート:コート一枚やしな(笑)。
ハス:フッフッフ。私は雪の都生まれ。これくらいの寒さ、暑いくらいだっ!!
(イルナ):とか言いもって、こいつの唇、紫色してるねん(笑)。(編注:()表記について。これは卓を囲むプレイヤーの発言であり、イルナ本人が『戦車戦跡』にいるわけではない、という意味です)
GM:へいへい。で、助手席の方は?
シルバート:私が。薬の調合書でも書いとくわ。(テ注:処方箋といわんか?)(編注:『テ注:』とは、このバカ騒ぎを録音したテープを実際に聞きながら紙に書き写す、リプレイ制作作業において、最も大変な役回りの人による注釈です。近年のリプレイ制作は、全てGM一人で行っていますが、このキャンペーンの頃のテープ起こしは、分担して行っていました。私の記憶によると、『act1、ソフィ+GM』『act2、シルバート』『act3、ソフィ』『act4、ハス』『act5、コール』辺りだったと思います。最もぐうたらで字も乱雑なイルナは、この荒行を免れています。一応青森キャンペーンの頃は、この人もテープ起こしやっていたのですが)
GM:でも辺りは荒れ地やから、ガタガタ揺れて書きにくいと思うよ。さて、そんな風に運転手が鼻唄まじりで進んでいると…
コール:らーっららー♪
ハス:こ、こんな鼻唄って一体……
GM:突然、何かにつまずいたかのように車体が跳ね上がる。
コール:おおっ!?
ハス:何だ何だーっ!?
GM:じゃあ前に乗ってる人だけ、知覚ロールを1/2でやってみて。(編注:知覚に関して%で表された能力値に対し、それ以下の数値を2回連続で出して始めて成功する、という意味です)
ハス:98、ミス。
コール:……失敗、ムリや……
シルバート:あれっ?

── そう、注意深い読者ならお気づきのことと思うが、ハスがいつの間にかシルバートを押しのけ、助手席を占領してしまっている。血の気の多い彼にはよくあることなので、ご了承頂きたい。(補助席に腰かけていたという可能性もあるにはあるが)

GM:二人とも失敗?じぁあ車は軽く吹っ飛び、衝撃と共に着地する。
コール:ち、ちょっと待って。おもむろにシートベルトをガチッとはめる。
ハス:そんなものがあったのかっ(笑)!!
シルバート:知らなかったぞーっ(笑)。
GM:俺も知らんかった(笑)。ところが、ロリエスが勢いよく着地したちょうど目の前に、かつての戦いで壊れたらしい戦車の残骸が横たわっていた!!
ハス:おいコール、早く止めろぉ!!
コール:(突然)エ、エア……エア……
シルバート:空気でも欲しいんか?
ハス:『エアバック』!!?(テ注:ショックアブソーバーやね。BMWとかについてるやつ) 
コール:そぅ、エアバックがバシュ!!!

   (一同爆笑)
──己の都合のいい想像力によって、次々とロリエスをカスタム化させてゆく夢見心地の変質者、コール=パーバート。

ハス:そんなものまであったのか(笑)!
GM:なんつー車や……エアバックがバシュ!はわかったけど、結局そのまま突っ込むん? ハンドルを握るコール、どーすんの?
コール:「あ、ああっ」(悲痛な叫び声) 
GM:「ああっ」じゃねーよ(笑)。
コール:と、とりあえずみんなどーしますか?(一同騒然) 
GM:ああっ、すぐ前にあんねんぞっ!
ハス:「おわっ、突っ込むぞっよけろーっ!」
シルバート:「うわーっ、四輪ドリフトだーっ!!」 キキーッ!!(テ注:ふ、古い)
GM:「キキーッ」か(笑)。じゃあエアバックとやらを出してると考えても、操作判定1/3やな。
コール:そ、そんな……ブチ当たった(笑)。
GM:まぁブチ当たったら大爆発してまうやろから……そやな、じゃあコールがおもいっきりハンドルを振り切った勢いでロリエスは横転し、ハスもシルバートも、そしてコールもハンドルを握ったまま車から放り出された。ヒューッ、ガァーンッ!!(一同笑)
コール:ううっ、ハ、ハンドルがぁ……(笑)。
ハス:こらコール、貴様ァァーッ!!
GM:という感じやけど、さてどないしましょー?
シルバート:鋼鉄の肉体を持つ私はムクリと起き上がる(笑)。「こらーっ、痛いじゃないかーっ」
ハス:俺はコールの襟首を引っつかんで殴り倒す(笑)。
GM:ハンドルを握ったままのコールは?
コール:気絶している。

   (一同大爆笑)
──大胆かつ不敵な責任逃れ。

ハス:何が気絶だぁーっ(笑)!! 運転席から引きづり出すわ。(テ注:もう出てるって)
シルバート:そうか、気絶しているのか……じゃあこの注射を撃ってやろう、元気になるぞぉ(笑)。
ハス:シルバートさん、どーぞやってくれっ(笑)。
コール:ぎゃあああっっ。
GM:はいはい。てなわけで、木枯らし吹く寒空の下、三人はロリエスの修理に取りかかるのでした。(ふぅ、やれやれ)



 
 
 

▼replay_Gear Antique

■『金の瞳の女神 act1』/01

←return   →next