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■『ボク、トムキャット』/06

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■ scene 6 M'1950/03/04
〜匣〜

アレフ:「やぁ、ケント君。何かうれしいことでもあったのかな?」
ケント:「今日、ここに船長が来るんだ」
アレフ:「ほぉ、それは私達に何か用があるということですかな?」
ケント:「僕らに話があるんだって。しばらく待っていてくれよ」
アレフ:「ふむ、それは構いませんが。一体どんな用事なのでしょうね」
ケント:「きっと特別な冒険談をしてくれるんだよ」
アレフ:「それは楽しみですな」
リリー:「じゃあ席につきまーす」
サイクス:「私も座ろう」
GM:しばらくすると、店にロカルド船長がやってくる。
ケント:「船長、ここでーす」 両手をぶんぶん振る。
GM:「おお、皆さんお揃いですな」 君達を見つけると船長はにこやかにやってくる。「今日は無理を言って集まってもらい感謝するよ。さて、ケント君を通して君達に集まってもらったのには、私のちょっとした悩みを聞いて欲しくてね。各国を旅した経験のある君達の知識と力が借りれればと、思ったんだ」
リリー:「あの、私達でよければなんなりと」
GM:「うむ、そう言ってくれるとうれしい。ではさっそく事の顛末を聞いてもらおう」 そう言ったロカルドは、何から話したものか……などと少し沈黙を続けた後、ゆっくりと話を切り出す。「実は北の都、ユーレンブルクで手に入れた珍しい品物があってね。<リリパトの匣>という物だが、ご存じかな?」
リリー:「いえ……」
GM:「中にはあれを妖精エンジンと呼ぶ者もいる。駆動させると、中でこき使われる妖精の悲鳴が、我々人間以外の者達に聞こえ、やたら物騒なものが引き寄せられる、と噂されたりもするからね。とにかく<リリパトの匣>は、我々、ただの人間の理解を越える未知の機巧箱なんだ。そこで、事の真相はさておき、箱を見つけた私はそれを一度、ペトルシアの学究都市にいる私の友人の科学者に調べてもらおうと思っていたんだ。しかし、その<リリパトの匣>が昨夜、何者かによって船から持ち出されてしまったんだ。部下の話によると、不審な男が一人、船内に忍び込んで寝ていたのを見つけたということだが、大学構内に停泊していたとはいえ我々も不用心だったな、とは思っている。とにかく後悔しても始まらない。私は君達に、その箱捜しを頼みたいんだ。この町の人達を疑いたくはないが、簡単に構内に忍び込める者となると、やはり外から来た行商人より、町の住人が箱を持ち出した可能性の方が高いからね」
リリー:「要するに、私達がその妖精エンジンを見つければいいんですね」
GM:「ああ。それと最近、この町で何やら奇妙な光やなにかが、夜な夜な現れるそうだ。私はそれも何か<リリパトの匣>と関係しているような気がしてならないんだ。もし箱が町の外へ持ち出されていたのなら、多分、これほど示し合わせたかのようにそんな不思議な事件も起こらなかったのでは、と思えてね。是非その辺りのところも一度調べてみてはくれないだろうか」
アレフ:「船長。一つお尋ねしたいのですが、その<リリパトの匣>とやらは、一体どれ程の大きさなのですか?」
GM:「そうだな。私の両手に収まるくらいのごく小さな箱で、鉄か木か、一体何で出来ているのかがわからない緑色の板で覆われているという以外には、これといって目立った特徴もないな」
アレフ:「ほぉ、すると人一人でも簡単に持ち去ることができてしまうわけですね」
GM:「ああ。あの昨夜船に寝ていたとかいう、男が持ち去った可能性も十分ある」
サイクス:「全くですな」
GM:「もっと部下に調べさせておくべきだったな。なにやら随分ひ弱そうな男で、『僕は見学に来ていただけなんです』とか、妙な言い訳をしていたらしいのだが。夜中に見学だなんて、あからさまに胡散臭い話だろ」
ケント:「全く、ファンの風上にもおけない奴ですね」(笑)。
一同:(笑)。
GM:船長を騙し通せたか、知覚ロール×1。
ケント:(ガシャン)……31、成功。「同じファンとしても、最低限のマナーは守って頂かないと困ります」
GM:と、そんなことを話し合っていたわけですが、どうしましょう? やる?
リリー:「わかりました。私達でよければ、その箱捜し、引き受けましょう」
GM:「それは良かった。数日後には修理も終えて、私はまた航海を続けなければならない。時間も僅かだが、頼んだよ」と、密談を終えたロカルドは君達の席を離れ、他の客達の招きに応じて、また酒の肴に数々の冒険譚を披露し始める。トラルやナティも楽しそうに、船長の話に聞き入っているし、ケントだけ気づいたあの町長の娘も、今晩もやってきている。彼女の事、みんなも教える?
ケント:いや。
アレフ:情報広めろよ(笑)。
GM:で、君らはこれからどうしよう?
リリー:うーん。さっそく調べに出かけてみますか。
アレフ:私はあまりテントを空けるわけにもいきませんので、そろそろ帰りましょうか。釣り道具を担いで店を出ます。
GM:では、中洲公園めざして夜道を行くアレフの耳に早速、何かの騒ぎの音が飛び込んでくる。「おい、こっちだ!」とかいう人の声やら、ダダン!とかいう銃声とか。
アレフ:今夜も釣りどころではないですな。ちょっと覗きに行ってみましょう。
GM:路地の中を少し入ると、曲がり角で大きな人影にぶつかり、君は倒されてしまう。見上げるとそれはどうやら黒服の男らしく、なにやら非常にものものしい感じ。男は君には目もくれず、走り去って行く。
アレフ:やれやれ、大変な夜だな。しかし、さっそく胡乱な男を発見したということで、起き上がって追跡してみます。
GM:運動ロール×1。
アレフ:あんまり足は速くないんやけど、(ガシャン)……駄目だ。あっという間に見失ってしまった。
(サイクス):速ぇ(笑)。
アレフ:はぁ、はぁ、はぁ……儂ももう歳なんじゃろうか。まだ三十路を回ったばかりだというのに。
GM:さて、リリーとサイクスは?
リリー:ロカルドさんから話も聞いたことだし、さっそくちょろちょろを見回りしてみましょう。
GM:知覚ロール×2。
リリー:(ガシャン)……58、失敗。(ガシャン)……04、成功。
GM:では、不審な人物や出来事はないかと、調査に出かけた君ら二人。しばらく歩き回っていると、なにやらリリーの隣が明るくなる。
リリー:?
GM:振り返ると、君の少し後ろを歩いていたサイクスの頭上にくるくると光る発光体が現れている。サイクス本人は全く気づいていない、というより反応なし。
(アレフ):えらいもん、見てしまったな。
リリー:一瞬、立ち止まって様子を見ます。
GM:君の脇を音も立てずに通りすぎたサイクスの頭上を、相変わらずふわふわと、踊るようにいくつかの光が回ってるよ。
リリー:では、それを掴んでみましょう。
GM:(ガシャン)……15発直ダ。(編注:「直ダ」とは、防御(AV)無視の直接ダメージの略)
リリー:ギャゥ!
GM:伸ばした手から脳天まで電撃が突き抜け、リリーのあげた悲鳴で、サイクスが瞬き。目の焦点が一瞬元に戻る。
リリー:「あててっ……サイクスさん、大丈夫ですか?」
サイクス:「おや、リリーさん、どうしたんですか?」
GM:リリーに衝撃を与えた光は、そのままその場で霧散するように消えてしまった。
リリー:「さっき、あなたの頭の上にお星様が回っていたんです」
サイクス:「ボクの頭の上にお星さまがぁ……」
リリー:「でももう、消えちゃいました」
GM:ケントはその間なにしてるん?
ケント:密かに遠めに飛行船を見に行く。
GM:すると、路地を突然飛び出してきた人とぶつかり吹き飛ばされる。
ケント:「気をつけろい!」
GM:「何処だ! 奴は何処だぁっ!」などと叫んでいるのは、さっきまで一緒に餌を喰ってたアレフですが。
アレフ:ぜーはー、息きらしながら。「やぁ、ケント君か。大丈夫かい!?」
ケント:「アレフさん。脅かさないでくださいよぉ」
GM:と、アレフが飛び出してきた向かい側の路地から「ギャゥ!!」とかいう悲鳴が聞こえてくる。
アレフ:「あっちだ、行くぞ!」
ケント:「なんだかわかりませんが。はいっ!」
GM:ではそのケントが大学まで行こうと歩いていた通りを渡り、向かいの細路地に入って、更に向こうの別の通りに出ると、そこでは片腕を押さえて蹲ったリリーと、彼女を不思議そうに見下ろしているサイクスを見つける。
アレフ:「違ったか。リリーさん、さっきの悲鳴は一体何だったんですか?」 息を整えながら歩み寄って話しかける。
リリー:「あぁ、アレフさん。あの、サイクスさんの頭の上に光が回り出して」
GM:アレフは、リリーまでもがおかしなことを言い始めたと思った。
アレフ:駄目だっ、この娘までおかしくなっのか!?
リリー:「信じて下さい」
GM:アレフはひどく混乱する。
ケント:「リリーさん。その光るもの、って一体なんだったんですか?」
リリー:「物凄い電気の塊だったんです」……って、この世界に電気ありました?
アレフ:ない。
GM:科学体系としてはね。自然現象としては、そこそこ知られてます。まぁ、一応交渉ロール×1してみてや。信じてもらえたかどうか。
リリー:(ガシャン)……02、成功。
GM:リリーの冷静で理路整然とした状況報告を聞くにつれ、アレフはこの娘がラリってないことがわかる。
アレフ:「しかし、不思議な体験をしたものですね。手の痺れの方は大丈夫なのですか?」
リリー:「ええ、もう心配ないです」
ケント:「船長の言っていた不思議なことって、このことなのかな」
リリー:「かもしれませんね」
アレフ:では、私がさっきぶつかった例の物騒な大男の話もみんなにしてみるよ。
サイクス:「すると……あなたにぶつかった大男が走り去り、私の頭の上で光がくるくる回ったと、いうことですね」
リリー:なんか無茶苦茶(笑)。
GM:あー、知覚ロール×2してみて。現状さっぱりのサイクスだけは、1倍で。
サイクス:(ガシャン)……12、成功。
アレフ:42、駄目です。
GM:その黒服の男の出で立ちを聞いたときに、
ケント:……よっしゃ、成功。
GM:サイクスの頭の中にもやもやっと、スパイや密偵のイメージが思い浮かぶ。
サイクス:「ザ・スゥパァー・スパイ!」(突然低音を響かせた怪しい外人口調)
アレフ:「『ザ・スゥパァー・スパイ!』とは何ぞや!?」
ケント:「スパイですか!」
アレフ:「何か知っているんですか、サイクス卿?」
サイクス:「……それはシノゥーヴィという特務スパァイの一種でな」
ケント:「NINJAですね!」
サイクス:「そう呼ぶ者もいる」
アレフ:「確かに、怪しい連中だったな」
GM:サイクスにそう教えられ、アレフの頭の中で奇怪な密偵のイメージがどんどん膨れ上がっていく。
アレフ:「そうか、あの黒コートの中には怪物が……」(笑)。
サイクス:「彼らは武器として風車やその他各種の兵器を駆使するという」
一同:(笑)。
アレフ:ほんまかい(笑)。
リリー:ほんまみたい。
GM:さすがに胡散臭く思えてきた? サイクス、交渉ロール×1。成功すれば、君の話を信じ込ませることが出来る。
サイクス:(ガシャン)……47、失敗。
アレフ:「やはり胡散臭いな」
GM:しかしリリーのイメージは留まる事なく広がっていく。君の中での密偵は、筋肉隆々の艶光りした黒い体に角と翼と尻尾が生えていて、
サイクス:更にその尻尾の先には強烈な毒が仕込まれていて。
アレフ:象をも一撃で倒すという。
リリー:……そんなスーパースパイも<匣>を狙っているのでしょうか(笑)?
GM:と、そのような馬鹿話で、深夜の人気のない路上は盛り上がっている。
アレフ:こんなところで立ち話もなんですから、そろそろ帰りませんか。もうすっかり夜更けですし。
リリー:そうですね。今日はもう帰りましょう。
GM:では、リリー、サイクス、ケントはスズメ亭。アレフは中洲公園の青テントか。じゃあアレフだけ知覚ロール×1。
アレフ:(ガシャン)……20、成功。
GM:ではようやく青テントへ帰りついた君は、ふと気づく。テントの形が変。
アレフ:ややっ!? 何かがおかしい。ごそごそっと潜り込んでみよう。
GM:すると君の愛機、カルパートエストニアゴルビーZ ハススペシャルのシンボルマークとも呼べる前方部の突起物、グレートぞうさん1000R'zが無残にも根元から毟り取られてなくなっている。
アレフ:ないぃぃっっ!!



 
 
 

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