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■『ボク、トムキャット』/07

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■ scene 7 M'1950/03/04
〜二日前〜

GM:さて翌日、3月6日、ソルデイ。(編注:SOLDAY。週第六日。安息日。平たく言えば、日曜日) 星祭二日前です。町の人達は、その準備にも終われつつも、最近頻発している発光体目撃話や珍品盗難事件のせいで、気もそぞろといった雰囲気。昼間からそんな話でもちきり。幸い君らを除く町の人達に直接的な被害が出た人はいないようで、まだみんな怖いもの見たさといったノリで盛り上がっている。さて、本日の各自の行動はいかがしましょう?
アレフ:グレートゾウさんが毟り取られたことで、動揺を隠せずにそわそわしている。
GM:元気よくやってきた弟子達が各自竿を振り始めるよ。「で、先生。今日は何を教えて下さるのですか?」
アレフ:「そそ、そうだね。今日は各自、それぞれに、し、精進したまえ」(笑)。
GM:ケントは?
ケント:うーん。飛行船を見に行きたいが、船長との約束もあるから。今日は怪しい奴がいないか、町中を虱潰しに捜すことにするか。「すみませーん。この辺りで最近、怪しい奴を見ませんでしたかー?」
GM:そのままやん。それに、シラミ潰しったって、町中となるとちょっと広すぎるから、もう少し的を絞ってみたら。ちょっと考えといて。で、リリーは?
リリー:はい。とりあえず昨日のことを船長さんに報告しに行きます。
GM:ふむ。するとリリーから事の次第を聞いたロカルドは腕組みしたまま言う。「リリー君を襲ったというその光は、ひょっとするとエルモ精霊……ではないかな」
リリー:「エルモ精霊?」
GM:「ああ。おそらく、そいつも例の<リリパトの匣>に引き寄せられたんだと思う」
リリー:「はぁ」
GM:「しかしそう考えると、<匣>はまだこの町にあるということになるな。これは吉報だ。次は是非、その光の寄り集まる場所を捜してみてはどうだろう」
リリー:「えぇ。でもその場所はサイクスさんの頭の上でして」
(アレフ):サイクスが喰ったんか!?
GM:件のサイクスは?
サイクス:駅前にボーッと立っている。
(アレフ):やめてくれー(笑)。
サイクス:両腕で大事そうに蒸気シンセを抱え込み、時々何の脈絡もなく単音でピー、とか鳴らしつつ。
GM:「おい、今日のあいつ。前にも増して様子がおかしくないか!?」などと、広場を行き交う人たちは囁きあっている。ケントは?
ケント:そやね。町の外からやってきた商人や旅芸人の人達に、この町に来てから、変わったことはなかったかい?、などと何気なく訊いてみよう。
GM:了解。まぁ、具体的にはやはり、夜の発光体騒動や窃盗話を聞かされることになる。屋台の親父とかも不思議そうに君に話す。「この町では、ああいった妙な光が漂うのが普通なのか? それとも星祭まであと二日だろ。なにか祭りと関係あるのかな」
ケント:「それはちょっと言えないよ。まぁ、祭り当日はもっとすごいアトラクションが目白押しだから、今はあの余興で楽しみにしておいてくれよ」
(アレフ):ほんまかよ。
GM:そうして各自が思い思いに一日を過ごすわけですな。さて、陽も傾き始めると駅前広場では骨董品屋の映写会が始まる。今日の演目は『怪盗ノレパン一世』 リリーはもう広場に来てる?
リリー:はい。みんなに会いに。早速船長さんに教えてもらったことを伝えます。
GM:すると、広場の中央ではサイクスが棒立ちになっているが、まともに話を聞いてもらえそうにはないな。あと、広場周辺の屋台をケントが聞き込みしてるのを見かける。
リリー:じゃあ、ケントさんに事の次第を話します。
GM:話して。
リリー:あー。「ケントさん。船長さんに教えてもらったんですが、昨日私がサイクスさんの頭の上で見た光は、エルモ精霊というものらしいんです。それで、その精霊の近くに例の妖精エンジンがあるかもしれない、って言ってました」
ケント:「成程。するとその光が現れた辺りを捜さなくてはいけない、ということですね」
リリー:「ええ。このことをアレフさんにも知らせに行きましょう」
GM:すると、失った何かを捜し求めるかのようなおろおろした足取りで、坊主がふらりと広場に入ってくるのを見かける。
リリー:あ、いた。「アレフさーん」
アレフ:「おぉ、リリーさんにケント君。こんなところにいましたか」
サイクス:ピー。
GM:君達の間の人込みの中から、奇怪な単音が響く。
リリー:「あぁ、あんな所にサイクスさんも」
GM:さて、さっきから屋台巡りをしていたケントに、骨董品屋のチョビ髭オヤジが尋ねてくる。「そういえば君は仕事を捜していたね。いい雇い主は見つかったかね?」
ケント:「ええ、もう何処も人手不足らしく、あちこちから引っ張り凧ですよ」
GM:知覚ロール×1してみて。他の人もやりたい人はどうぞ。
リリー:やってみます。
アレフ:私は気もそぞろなんで。
サイクス:プー。
リリー:(ガシャン)……成功。
GM:すると、リリーは何気に骨董品屋のオヤジとケントの会話を眺めているんやけど、彼らの傍らの骨董品屋の品揃えが数日前見かけたよりも、より変な珍品が数多く並べられていることに気づく。妙な形の瓶やら動物と思しき黄色の縫いぐるみとか、物々しい出刃包丁とか、巨大な象の頭とか。
リリー:ああ、あの骨董品屋さん、変わった品物も随分と増えて、楽しそう……
GM:すると君の熱い眼差しに気づいたチョビ髭オヤジが甲高い声をあげて笑う。「ホッホッホ。お嬢さん、何かお気に入りの品でも見つかりましたかな?」
リリー:「え、ええ」
GM:「世界各国から集めて回った珍品奇品の数々。どうぞ心行くまで御覧あれ。ホーッホッホッホ」
ケント:「数々の珍品奇品ということは、この店の品はあんまり売れてない、ってことですね」
GM:「だまらっしゃい。各国を巡り歩いてきたが、こんな侮辱を受けたのは初めてだ」
サイクス:プー。
GM:「君もよく御覧なさい。見た途端、欲しくなるような品揃えじゃないか」
サイクス:ピー。
GM:「ほら、あそこで奇妙な機械を抱えた青年も、さっきから物欲しげな目をしているではないか。そうだな、君にはこんなブレスレットなんてどうかね」と、店長はトゲトゲのいっぱいついた腕輪を君に差し出す。
ケント:「ああ、こんなの付けたら、腕が上がらなくなりますからいいです」
GM:「じゃあこの象のヘルメットはどうかね」と店長は店の奥から重そうに抱えあげた象の仮面とも帽子とも呼べない被り物をカパリコ、とケントの頭に嵌め込む。
ケント:首が折れる。
GM:「アッ」という短い悲鳴をあげて象がねじ曲がったことに驚き、チョビ髭オヤジは慌ててそれを引き抜く。「危ない危ない。少しやりすぎたかね。娘さん、彼を介抱してあげなさい。それでは私はこの辺で」と、親父は象を抱えたまま、店の奥に引き込む。えー、君らの目の前にあるその骨董品屋は、駅前広場でもかなり大きな出店でして、繁盛してるかどうかはさておき、品揃えも奇妙に豊富な感じ。その夕方上映されている『ノレパン一世』のフィルムを回している映写装置一式も、その店の品物みたいやし。さて、そうして広場にたむろしている君らですが、えー全員知覚ロール×1してみて。
ケント:失敗。
サイクス:失敗。
リリー:失敗。
アレフ:19、成功。
GM:すると今日の出し物である『ノレパン一世』の大活劇に全員が食い入るように見ている最中、アレフ一人が、気もそぞろに辺りを見回していたわけやな。
アレフ:私のグレートぞうさんは、何処なんだ。
GM:すると君は、ふと、映写装置を回している蒸気手回し人形に目が留まる。そいつからは蒸気が出ていない。それどころか、すごく静かで滑らかに稼働している。
アレフ:おや? 確かあの機械を初めて見た時は……
GM:そんなことを不思議に思ったのは、仲間内ではどうやら君だけらしい。周りの連中は、『ノレパン一世』に夢中や。
サイクス:「クラリース! クラリース!!」(テ注:元ネタ映画『ノレパン三世 カリオストロの城』のヒロイン名)
リリー:ああ、同じ名前やってんねぇ。
ケント:「ゴ工モーン! かっこいいゼーッ!」
アレフ:……今、話しかけても聞いてはもらえまい。上映会が終わるまで待ちましょう。
GM:では、そうこうするうちに物語は大団円を迎えました。人々が満ち足りた溜め息を漏らし散らばり始めてる。
アレフ:では早速みんなに、さっき気づいたことを話してみます。「今日のあの映写機を回すヤツ。随分と静かで滑らかに動いてましたよ。確かこの間までは、蒸気を噴き出しながら随分大ざっぱに動いていたはずなんですが」
ケント:「そういえば、この前までのアレ。カタカタカタカタ煩かったよな。全く、人がいい気持ちで見ているって時に」
一同:(笑)。
アレフ:「最新型に変わったんですかねぇ」
サイクス:ブゥー。
ケント:「あのオヤジ、全然繁盛してそうになかったのに、どこからそんなもん仕入れてくる金があるんだ?」
アレフ:「それより、リリーさん。さっきからプーだのピーだの唸っている人、昨日から全然良くなっていないんじゃないですか?」
サイクス:「ヂョーブレース!」
リリー:「そうなんです」 じゃあもう一回ヤギのお医者さんの所へつれて行きます。
サイクス:「ボクは大丈夫デース」 プー!
アレフ:じゃあ私とケント君で担いで行くか。
サイクス:PIHHHH!
GM:と、いってももう日が落ちて夜になってるけど。
リリー:トントントン。「ヤギ先生。急患でーす」
サイクス:PYUUUH!
GM:扉を開けた途端、ヤギ先生は絶句する。「とうとうイくところまでいきおったか。して、どうするんぢゃ、この男」
リリー:「私に訊かれても」(笑)。
アレフ:「先生のお力で、なんとかして下さい。何か彼を正常に戻す良い手立てはないのですか?」



 
 
 

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