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■『ボク、トムキャット』/10

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■ scene 10 M'1950/03/04
〜ボク、トムキャット!(飛翔変)〜

リリー:そ、それは危ない。仕方ない、私がサイクスさんを説得してみます。
GM:戸口に立ちつくしたサイクスの背中に飛びつきながら、ケントも必死に説得してるわ。
リリー:「サイクスさん、サイクスさん、聞こえますか?」
ケント:「サイクスさん! そんな被り物は捨てて、早く正気に戻って下さい!」
サイクス:「ボク、トムーッ! トムゥー」
GM:どうやら、エルモ精霊に見入られた時から、彼の脳の歯車は、徐々にずれ始めたらしい。
リリー:うーん。こうなっては、私達には手に負えそうもない。あの船長さんの力を借りたいんですが。
GM:ロカルド船長は、例の箱捜しの為、夜の町に繰り出しているから、ここにはおらんよ。
リリー:う、うーん。どうしようもないなぁ。
ケント:「みんな、逃げて下さい! ガイキチが外に出ます!」
GM:警備員達も再び射撃体勢に入る。「もう、彼をこれ以上野放しにするわけにはいくまい!」
アレフ:「もう少し待って下さい! 今説得中です!」
GM:「彼は君達を無視して、もうそこまで来ているではないか! これ以上の猶予は与えられん!」 射撃手達が、狙いを定める。
アレフ:決断を迫られたか。もう一回、彼らを説得してみたいぞ。
GM:交渉ロール×1/2。
アレフ:「まだ、望みはあるのです!」(ガシャン)……31、(ガシャン)……20、おおっ、成功!
GM:では警備員達は、近寄るサイクスに対し射撃体勢のまま後退り、包囲網が少し広がる。
アレフ:「そうです、みなさん落ち着いて! とりあえず下がって下さい! 彼を刺激しないでっ!!」(笑)。
GM:で、トム=キャットの両翼にしがみついたリリーとケントはどうする?
リリー:うーん、何かいい手段はないか考えます。
GM:考えてるだけやったら、その間にもサイクスはズルズル進んで行ってるけど。
リリー:じゃあ、「ケントさん。こうなったら、彼の頭のトムを毟り取りましょう。これが彼を思い止まらせる、唯一の良策だと思います」
ケント:「そうですね。じゃあ一斉に引っこ抜きましょう」
GM:人力飛行機の両側から二人同時にトムをかっぱらうということで、二人とも力ロール×1して下さい。
ケント:てやぁ! (ガシャン)……失敗。
リリー:(ガシャン)……駄目です。失敗。
GM:サイクスがトムの内部で牙を立てているのか、二人が力を合わせても、ネコ頭はびくともしない。
リリー:ああ、トムと一体化してるぅ。
ケント:「サイクスさん! 一体何処へ行こうってんですか!」
GM:いや、ほんまに(笑)。それに、その人力飛行機乗ったはええけど、空飛びたいんやったら、高い場所いかな無理やと思う。もともとが鳥人間コンテスト用の、高台から飛ぶための作りやし。
サイクス:この辺で高いところというと?
アレフ:大学校舎内。
GM:時計塔。
サイクス:ではその塔の屋根へ向かう。
GM:アレフに説得され続けたまま、撃つ機会を逃し続けて困っている警備員達は、サイクスを包囲したまま後退を余儀なくされる。やがてサイクスは、大学校舎内に足を踏み入れる。
ケント:「サイクスさん! ほんとに何処へ行こうってんですか!」
サイクス:「ボク、トムゥー! ボクの頭を返してぇー!」
GM:ついに階段を上がり始めたサイクス。
アレフ:これはまずいな。とりあえず警備員達をそこに留まらせて、私もサイクスの説得に行きます。
GM:説得、ちゅうか他の二人は、サイクスの頭をすっぽりと覆ったトムをひったくろうとやっきになっている。
アレフ:じゃあ、私もネコ頭を毟り取るのに加わる。背後からヤッ、と飛びついて渾身の力で。
ケント:「アレフさん、慎重に! トムは小型推進爆弾ですよ!」
アレフ:「問答無用」 タァーッ!
GM:力ロール×1、失敗したら爆発ということで。
リリー:死ぬやん(笑)。
アレフ:細かいことは気にせず、ヤッ!(ガシャン)……11!
GM:サイクスが息継ぎをしようとした瞬間、アレフの腕に力がこもり、トムはスポッと抜ける。と、同時にサイクスの足も止まる。
サイクス:「ボクのアタマを返してーっ! ボク、トムゥ!」
GM:サイクスが振り向きアレフに飛びかかる。
アレフ:こぉ、(とアメリカンフットボールの身振りで)、サイクスを攪乱させつつ、階段を駆け降りる!
サイクス:「返してーっ! ボクのアタマを返してーっ!」
アレフ:気にせずダッシュ。
GM:階段を降りきった踊り場で、警備員達が一斉に銃を向ける。「撃ち方、用意!」
アレフ:「わっ、待って下さい! 今説得してますから!」
GM:その前に彼らを説得するんやね。交渉ロール×1/3。
アレフ:そんな無茶苦茶な。(ガシャン)……99、絶望的やぁ(笑)。 WOLいきたいんやけど、1/3でも一回でいけるん?
GM:ああ。
アレフ:でも初期値25しかないからな、(ガシャン)……22!成功。
リリー:三連続成功。さすが信心深いお坊さんやね。
GM:ところで、残りの二人はどうしてるん? 今、大学の運動場では、トムを小脇にアレフが死に物狂いで走り回ってる。その背後をサイクスが全力疾走で追い回している。
アレフ:誰か止めたれや(笑)。
ケント:仕方ない、サイクスに飛びついて叫ぼう。「取られたのは、あなたの頭なんですか! サイクスさん、あなたの頭なんですか!?」(笑)。
サイクス:「トムーッ! ボクトムゥーッ!! ボクの頭を返してーっ!」
GM:ケントは無我夢中のサイクスにあっけなく跳ね飛ばされる。サイクスはさっきからわめきっぱなしやけど、具体的になんかする? そのトム=キャットの両翼には、ガトリンク砲とかついてたから、前方のアレフを撃ち殺せるよ。
アレフ:なんで人力飛行機にそんなもんついてんねん!
GM:いや、トム=キャットやし。
サイクス:さすがに仲間殺すのはまずいやろ。……その場から助走つけて飛ぶ。頭なくてもいけるん?
GM:まぁ、元々切離せる爆弾やから、それは問題ないと思う。でも、その人力飛行機、あらかじめ用意された高台の滑走路から飛び降りていくように作られてるから、君が今走り回ってる運動場から上昇するとなると、かなり難しくなるな。操作ロール×1/3で、成功すれば飛べる。失敗すれば躓いて激しく転ぶ。
サイクス:一回目は、(ガシャン)……失敗。WOL。(ガシャン)……01成功。
リリー:幸運の風が吹いた。
GM:では、一瞬態勢を崩しかけたものの、突如吹き込んだ生温い夜風に煽られるように、サイクスは突然宙に舞い上がる。警備員達は皆、唖然としている。やがて足をバタつかせ徐々に高度を上げるサイクス。グラウンド上空を何周かした後、眼下に目標物を発見する。
サイクス:「トムッ!」 急降下。
アレフ:「わっ!」 トム放って逃げる。
ケント:「アレフさん! それは小型推進爆弾です。サイクスさんと衝突すれば、爆発します!」(笑)。
GM:確かに。大学全体を壊滅させる威力もあるかもしれんな。
アレフ:「わーっ!」 放ったトムが地面に落ちる前にまた拾ってから、そおっと地面に降ろす。でも、これからどうすりゃいいんや(笑)!?
GM:トム目がけてまっしぐらなサイクス。地面に置いた爆弾を目前に、中腰のまま悩んで動けないアレフ。それを遠巻きに固唾をのむケント。で、リリーはどうするん?
アレフ:「リリーさんっ!!」
リリー:「う……これは……仕方ありません。撃ちましょう!」

   (一同爆笑)

GM:「撃ち方、構えっ!」 仲間の君からようやく射撃許可が降り、警備員達は嬉々として銃口を上空の狂人に向ける。
リリー:「目標。高度20!」
GM:でも、これまで散々、撃たないよう必死に説得を続けてきたアレフは納得がいくんかな? リリー、交渉ロール×1で、アレフを説き伏せてみて。
リリー:(ガシャン)……04、成功。
アレフ:「殺っちゃってくださーい!!!」(笑)。
ケント:これまでの説得はなんやったんや(笑)。「アレフさん! そこから逃げてください! 蜂の巣になりますよっ!」
GM:「撃てーっ!」 警備隊長の叫びと共に、サイクス目がけて一斉に長銃が火を噴く。そやね、6人ぐらいが撃ったとして、命中判定するけど、回避はしてみる?
サイクス:こぉ、(と怪しく身をくねらせながら)、体を捩るように機体を傾けつつ、急旋回。
GM:真っ直ぐ飛ぶだけの人力飛行機に、そんなややこしい技術を求めるか。操作ロール×1/3。失敗したら激しく空中分解。
サイクス:(ガシャン)、一回目は、成功。(ガシャン)、二回目も成功。(ガシャン)……三回目、成功。
三人:おおっ!?
GM:なんや、三回も成功したんか。じゃあ分解せずにサイクスは急旋回。もし弾が当たっても、セービングスロー成功ということで、ダメージは半分にしとくわ。
サイクス:うん。
GM:射撃判定は……二人当たった。ダメージは、(ガシャン)……一人目13発、の半分で6発。
サイクス:こっち装甲5ある。
GM:じゃあ通常弾の徹甲力3を引いて防御力は2ということで、結局4発のダメージが君に撃ち込まれた。
サイクス:残りHP8。
GM:二発目は14、の半分の7−2で5発。
サイクス:残り3。
アレフ:気絶か!? 落ちたな。
サイクス:ヒュゥウウウウ。
GM:機体を激しく軋ませながらも見事な急旋回で、弾幕から辛うじて逃れたトム=キャット。しかし、その背後に二発の流れ弾が命中。操縦者のアッという短い悲鳴と共に、人力飛行機は錐揉み状態で落下する。そして運動場の真ん中に置かれたネコ頭のすぐ近くで、トム=キャットは撃墜。鈍い音を立てて押し潰れる音が、深夜のエスパーニャ大学に響き渡る。(編注:通常、機械へのダメージは、機械のHPだけが減る筈なのですが、サイクスは自身のHPを減らし、勝手に気絶してしまいました。まぁ、トム=キャットと一心同体だったということで)
リリー:お見事。
アレフ:町を襲う災厄の芽が一つ、消滅した。
GM:警備員達もほっと一息、互いの肩を叩きあったりして笑っている。「娘さん、あなたの指令、なかなか見事でしたよ」
リリー:「いえいえ。みなさんの腕が良かったんです」
GM:「しかし、その我々の射撃の腕で、あなたたちの仲間を傷つけてしまいました。果たしてこれで良かったのだろうか……」 警備員の一人がそんなことを言うと、ヤギ先生が歩み寄り、呻くように言う。
「いや、アレは彼らの仲間以前に、狂人じゃ。野放しにするとどんな災いを及ぼしたか、見当もつかないことになっておったであろう」 先生は更に髭を震わせ、声を怒らせてアレフに言う。
「それにあんたはお坊さんじゃろう。旅先で出会う者に正しい教えを広める前に、身内の狂人を真人間へと更生させる方が先決ではないのかね?」
アレフ:「いや、全くもっておっしゃる通り。反省しております」 もぉ、爆弾騒ぎでへろへろになった挙げ句、説教までされてしまったので、サイクス担いで宿屋へ引き返します。
サイクス:うむ。壊れた機体には、血文字で『トム』って書いとく。



 
 
 

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